研究者が使いやすく働きやすい空間を追求した ラボシステムの新ブランド。
全ての研究者が活き活きと研究活動に勤しむことができる、新しいスタンダードを築きたいという想いを込め、株式会社ダルトンよりラボシステムの新ブランド”MAGBIT”は誕生しました。研究活動時の所作で発生する違和感や不快感、障害物や非効率性などを「バグ」と考えることで「行為をデザインする」アプローチからソリューションを導き出し、研究者の所作を見つめ直し生まれたブランドです。
ハーズでは、ラボシステムの中核を成す実験台とドラフトチャンバー(局所排気装置)において、企画の根幹である”バグ”の抽出~ソリューションの創出を導く「行為のデザイン」ワークショップを開催し、そのソリューションを具体化する製品デザイン開発も担当しました。
ワークショップを通じて実現した9つの「行為のデザイン」を 順にご紹介します。
【MAGBITその1】 直感的な操作性で、思考と行為をシームレスにつなぐ。
BUG 01「ハンドルとノズルの位置に迷い、一瞬考えてしまう。」 ドラフトチャンバーにおいて、ハンドルとノズルの位置関係が識別しづらく、動きを止めてしまったり、誤ったハンドルを操作してしまうことがありました。
SOLUTION 01「最適なレイアウトデザインによる迷いのないスムーズな操作性」 位置関係を明確化するという設計思想のもと、ハンドルとノズルは左右の支柱に集約し、対となる組合せの高さを揃えることで直感的操作を実現しました。
【MAGBITその2】 「立つ。座る。見る。」くり返す行為の中のBUGを見つけ解決する。
BUG 02:「立ったり座ったりする過程で、ストレスの“塵”が蓄積する」
付属している照明の光源が視界に入ったり、天板下の引出しに足をぶつけるなど、立ったり座ったりをくり返す中で小さなストレスが積み重なっていました。
SOLUTION 02:「デザインを綿密に計算し、光が目に入る、足が当たるという不快感を解消。」
シェルフの下部照明は、灯具の収まりや角度を工夫し直接光が目に当たりにくい構造にしました。また、天板下引出しの下部ディテールは斜めにカットすることで、足当たりの不快感を軽減しました。
【MAGBITその3】 肝心な時に視界を妨げてしまう枠のデザインを見なおす。
BUG 03:「サッシ枠に視界を遮られ、ストレスを感じる」
前面サッシを閉めたまま庫内の進捗を目視管理する際、研究者の身長によっては、サッシ枠やガラスの境目が視界を遮ってしまうことがありました。
SOLUTION 03:「性別や体格を選ばないサッシ枠で、広くクリアな視界を確保。」
一般的なサッシの吊り構造を改めて見直し、サッシ自体の高さ寸法を最大化させることに成功しました。研究者の性別、体格によって視界が遮られることが無く、クリアに庫内観察が可能となりました。
【MAGBITその4】 いざというときにこそ直感で伝わるステータスランプ。
BUG 04:「どの機器がエラーを起こしたか、遠目からではわからない」
ラボ内で複数台のドラフトチャンバーを使用している場合、アラームが鳴っても遠方からではどの機器がエラーを起こしているのかわからないことがありました。
SOLUTION 04:「あらゆる角度からステータスランプが運転状態を明示。」
遠方および角度のない場所からでも一目で運転状態がわかるよう、ステータスランプをサッシ上部スラント面に設置しました。高い視認性を確保し、安全性向上にも大きく貢献しました。
【MAGBITその5】 統一感のないラボシステムが心理面に与える影響を見直していく
BUG 05:「もっと素敵な環境ならモチベーションも上がるのに」
長い時間を過ごすラボ環境は、無意識のうちに作業効率やモチベーションなど心理面に大きな影響を与えており、研究活動の効率性や生産性に関わる心理的なバグが存在することが分かりました。
SOLUTION 05:「統一感のある意匠性で、働き心地のよい空間へ。」
ラボ空間には、ドラフトチャンバーや実験台をはじめとするさまざまな設備が共存します。各々の色調はもちろん、規則性あるアイコニックなディテールを纏わせることで統一感のあるすっきりとした空間を演出しました。
【MAGBITその6】 色彩が与えるマイナスの視覚効果を見直していく。
BUG 06:「ブラックは重過ぎ、ライトグレーは視認性が良くない」
一般的な天板色であるブラックが、暗い・重いなど心理的に影響を与えることもあります。また、ライトグレーの天板は雰囲気が明るいものの、落ちた粉状の試薬が識別しづらいというバグを生み出していました。
SOLUTION 06:「高い実用性と心理的効果を考慮し、天板はダークグレーを採用。」
従来のスタンダードであるブラックと前シリーズの標準色であるライトグレーのメリットとデメリットを整理し、新たに「ダークグレー」を採用しました。粉状検体における識別のしやすさはもちろん、スタイリッシュな印象になったことで落ち着きや心理的安心感をもたらしました。
【MAGBITその7】 自由度の低さに起因する非効率な動きを見直す。
BUG 07:「実験台の中間に仕切りがあると広く使えず、ちょうどいいところに邪魔があることで非効率。」
従来の実験台では、間口の中間にある仕切りが邪魔をして、使えるスペースが制限されたり、ちょうどいい位置に物が置けないことがありました。
SOLUTION 07:「1スパン最大2400mm。使い勝手が自由でワイドな実験台。」
1スパンあたり最大2400mmという構造にすることで足元スペースを広く確保しました。この構造をスチールタイプのシェルフにも応用し、邪魔のないワイドな実験台で備品をフレキシブルに収納できるようになりました。
【MAGBITその8】 心理的ストレスを引き起こす音に着目する。
BUG 08:「突然の大きな音の積み重ねは、ストレスになり変わる」
研究活動中に響く「ガン」という耳障りな音。ドラフトチャンバーのサッシとストッパーの接触音が何度も耳元でくり返され、その乾いた響きのある音が心理的ストレスの原因となっていました。
SOLUTION 08:「サッシとストッパーが接触する際の衝突音を軽減。」
サッシを上下することで発生するストッパーとの衝突音。
サッシグリップの形状を見直し、サッシ本体を軽量化すると共に、「つまむ」という新たな所作を加えることで繊細な上下操作を可能にしました。
【MAGBITその9】 デッドスペースこそ、コミュニケーションスペースになり得る。
BUG 09:「人が集まる場所だから、もっとスペースを活用したい…」
配線、配管を通すことが役割のエネルギーシャフト。限られたラボ空間では、このスペースの有効利用が必然でありました。
SOLUTION 09:「限られた空間を創造の場へ。人が集まるオープンなスペースに。」
圧迫感を与えかねない、床から天井まで伸びたエネルギーシャフトを逆手に取り、人が集まり気軽に議論を交わせるコミュニケーションボードとして活用させ、オープンに使えるようにしました。